このアーカイブについて

 このアーカイブは、フィールドノートを中心に、高谷好一(京都大学名誉教授)の現地調査の記録および研究成果をアーカイブ化したものです。

高谷好一について

 高谷好一は、日々フィールドワークにして、フィールドワークを栖にしていたような人でした。その足跡は東南アジアを中心に世界中に広がっています。職場のある京都にいても、研究室にお弁当を二つ持ち込み朝から晩まで、あるいは、泊りがけで仕事をすることも度々でした。研究室の机を並べて仰向けに寝そべり、天井に東南アジアの5万分の一地形図を貼り合わせて眺めていたという証言もあります。こうして眺めると、東南アジアの地形の違いがよく分かるとのことでした。京都にいてもフィールドワークの続きをされていたのではないかと思われます。
 海外のフィールドワークで高谷は、現地の様子をつぶさに記録していました。旅先で見たこと聞いたことをその場でB5版程度の大きさのカードにメモし、夜、宿舎にたどり着いてからは日中のカードを丁寧に書き直していたそうです。作業が終了するのが明け方近くになることもありますが、翌日もまた旅に出て、記録を繰り返すという毎日です。この苦行のような旅を続け、その結果、蓄積されたのが大量のフィールドノートでした。
 フィールドノートに記載された内容は、現地の地形や土壌、植生、農作物、農具、水文環境、家屋敷など多岐にわたります。現場を観察し、時には土を掘り農作物に触れ、農具をスケッチしながら、自然環境条件や生業体系について記録していました。また、移動は車が多かったのですが、しばしば車を停めては写真をとったり、そこで農作業する人たちに話を聞いたりしていました。村や町に到着すると、村長や町の代表らにその地域の歴史や進行中の開発プロジェクトなどを詳しく聞いています。こうして、景観の観察記録や多数の聞き取り記録、写真、スケッチ等からなる、多彩なフィールドノートが蓄積されていきました。これが高谷好一フィールドノートの内容です。

フィールド・アーカイブ

 晩年になり高谷は、印刷物として刊行することを念頭に、それまで手書きのカードの状態で保管していたフィールドノートの文字起こしを開始しました。その過程で、当時の京都大学地域研究統合情報センター(現東南アジア地域研究研究所)で地域情報学プロジェクトを進めていた柳澤と協力することになり、刊行に向けて、一気に話が進みました。その結果、2012年3月からフィールドノート集成が順次刊行され、翌年度末までに、全8巻が刊行されることになりました。
 地域情報学プロジェクトではその後、高谷好一フィールドノートのデータを時空間上で表示するフィールド・アーカイブのシステムを構築し、地図上で高谷好一フィールドノートの地点ごとの情報を閲覧できるシステムを構築しました。これがフィールド・アーカイブです。

https://fieldnote.archiving.jp

高谷好一フィールド・アーカイブ

 さらに、高谷好一フィールドノートの記録とともに、そこから生み出された数々の研究業績をあわせて閲覧できるシステムを構築しました。それが、この「高谷好一フィールド・アーカイブ」です
 このアーカイブの見方は、とても簡単です。フィールドノートについては上のタグの「フィールドノート一覧」をご覧ください。高谷好一の詳しい履歴と研究業績は「年譜」をご覧ください。
 高谷好一フィールド・アーカイブ構築の第一の目的は、高谷好一の足跡を懐かしむためではありません。むしろ、残していただいた資料を、将来のための新たな研究資源として利用可能な状態に整理することを最大の目的としています。そうすることが高谷先生のご遺志に沿うことでもあると信じています。本アーカイブを通じて、フィールドワーク、すなわち、現地で自分自身の目で見て耳で聞いた情報を基に、世界を構想するというその姿勢を学びつつ、本資料をさまざまな方向で有効活用できればと思います。ぜひ、ご活用ください。

文責 柳澤雅之


京都大学東南アジア地域研究研究所


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